九死に一生『小さいおじさんと巨大な犬』
【プロフィール1】
私には中学生の時、「家路の最終コーナーを自転車で全速力で曲がりきる」という習慣がありました。
道幅は車が一台通れるくらいあるのですが、住宅地の一番奥にあるため、ほとんど車は通りません。もちろん信号などはありません。交差点の内側は、空き地だったので見通しは非常に良好でした。
そんなある日、自転車で最終コーナーへ差し掛かった時、空き地に小さいおじさんと巨大な犬が見えました。小さいおじさんは綱引きの綱くらいあるリードを自分の腰に巻き付けていました。
その時、巨大な犬の目が私を捉えました。同時に私も巨大な犬の陰に子犬が一匹いることを確認しました。
実はこの小さいおじさんは闘犬家で、巨大な犬と子犬は、まさしく闘犬だったのです。
闘犬は全速力で突っ込んでくる私をロックオンし、臆することなく臨戦態勢に入りました。
なんと闘争本能をむき出しにして、私に襲い掛かってきたのです!
小さいおじさんは、腰に巻き付けた綱により、ぼろ雑巾のように引きずられていました。
しっかりしてくれ!飼い主のおじさん!
飼い主が当てにできないと悟った私は、一瞬頭が真っ白になりましたが次の瞬間、心の声が聞こえてきました。
『逃げ切ろ!』
あやうく急ブレーキをかける寸前でしたが、再びペダルを全力でこぎ始めました。
迫りくる闘犬の口だか前足だか判りませんが、私の右足をかすめていきました。私は交差点を曲がらず全力で直進して田畑エリアに避難しました。後ろを振り返るともう闘犬の姿はありませんでした。
『たっ・・・助かった』
私は安堵のため息をつきました。
咄嗟の出来事でしたが、私の人生においてとても濃縮された時間で、今でも記憶に焼き付いています。
それにしても、心の声は誰だったのでしょう?神様?ご先祖様?潜在意識?それとも小さいおじさん?答えは分かりませんが、私は、心の声により助けられたのでした。
私の心の声の主さん、『いつもお助け頂き、ありがとうございます。』