電子証明書「Common Pass(コモンパス)」と「コモンズ・プロジェクト(TCP)」
はじめに
新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が続く中、多くの国では出入国に、PCR検査結果や行動履歴の共有、行動制限などが必要となっている。
こうした中、出入国のためにPCR検査結果などを共有する世界共通の
電子証明書「Common Pass(コモンパス)」
の開発が進んでいる。
コモンパスとは
渡航者のPCR検査結果やワクチン接種歴などの医療情報を本人ID(パスポート番号など)と紐づけ、電子証明する仕組み。
各国の出入国基準を満たしていることを検証する方法には、スマホアプリが活用される。
(アップルの「Apple Health」とグーグルの「Common Health」など)
コモンズ・プロジェクト(TCP)とは
米ロックフェラー財団の支援を受けて設立された非営利組織。
スイスに本部を置き世界各国で活動しており、電子証明書「コモンパス」の構想を推進する。
国際的な非営利組織であるコモンズプロジェクトがデータ基盤を含めたフレームワークをつくり、それを各国政府に活用してもらうという構想である。
実際には、世界経済フォーラムや国際文化会館(日本)などが運営を担う。
国際文化会館理事長の近藤正晃ジェームスはTCPグローバル評議員を、また同理事の宮田裕章氏(慶應義塾大学医学部教授)はTCPグローバル評議員と日本代表を務めている。
フレームワーク
出典:国際文化会館
スケジュール
2020年7月初めにコモンパスのフレームワーク設計と国際展開を開始後、すでに52カ国の政府関係者や国際機関などが賛同しているという。
同プロジェクトは8月中にコモンパスの仕様を決め、10月には各国の政府機関などに仕様の提案を行う計画だ。
宮田裕章氏のコメント(抜粋)
世界経済フォーラムも、経済合理性至上主義の見直しをテーマとして、今年を「グレートリセット」の年と位置づけています。
今、世界各国は、経済と命のバランスだけでなく、人権や格差、教育、環境など様々な価値の中で、何を大事にするのかを問い直しています。
ダボス会議で安倍晋三首相が提唱した「Data Free Flow with Trust(信頼ある自由なデータ流通)」とも関係しますが、「共有財としてのデータをどう考えるか」ということがまさに実践の場の中で問われています。
新型コロナ対策でも、世界各国でデータが重要な役割を果たしています。
今後ワクチンが実用化されるにあたり、世界を自由に行き来するためにはワクチンの接種履歴というデータを世界中で共有しなければならない時期が訪れます。
また、PCR検査の結果や本人の健康状態、現地での行動の情報も合わせて、共有する必要があるでしょう。
国を超えて、データを繋がなければならないという強い動機の中で、立ち上げられたのが米ロックフェラー財団や世界経済フォーラムが取り組むCommons Projectです。このプロジェクトの中で運用されるのが世界共通の電子証明書「コモンパス」です。
日本では国際文化会館に事務局を置いています。
コモンパスは共有財としてのデータをどう扱うかというモデルケースとなる可能性があります。