『薔薇と桃と李と桜』 そして 『敷島の』
今日は何の日?
本日 3月27日は「さくらの日」です。
日本さくらの会が、1992年に制定しました。
3×9(さくら)=27の語呂合わせと、七十二候のひとつ「桜始開(さくらはじめてひらく)」が重なる時期であることから、この日になったとのことです。
決して語呂合わせの部分には、突っ込まないであげてください。
桜の属性
実はサクラは、バラ科モモ亜科スモモ属(サクラ属)の落葉樹だったのです。
バラやモモ、スモモが、桜からは全くイメージできなかったのは、私だけでしょうか?
日本の国花である桜
桜は、日本の国花です。
国花は、広辞苑で
「その国民に最も愛好され、その国の象徴とされる花」
とされており、
日本では、国民に広く親しまれている
「桜」や
皇室の家紋のモチーフである
「菊」が
事実上の国花として扱われています。
菊は、国より皇室の象徴としての意味が強いため、桜が一般に国を象徴する花として語られます。
日本の国花が桜になったのは、本居宣長の「敷島の」という歌が影響を及ぼしたとされています。
本居宣長 「敷島の」
「敷島(しきしま)の大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花(やまざくらばな)」
これが、本居宣長の詠じた「敷島の」という歌です。
敷島
歌の中の「敷島」は「大和(やまと)」に掛かる枕詞であるため、敷島自体に大きな意味はないのだと思われます。
大和心
「大和心」は、大和魂を表し「日本古来から伝統的に伝わる固有の精神」を意味します。
匂う
「匂う」は、この歌の重要な部分で、複雑で奥深い意味が込められています。
これは、日本人でなければ使えないような言葉と言っていいと思います。
「匂う」には、
■他のものの色に映り染まる
■色があざやかに照り輝く
■美しさ・魅力などが、その内部から漂い出る
■美しく艶やかである
■他のものの影響を受けて、はなやかに栄える
■恩恵やおかげをこうむる
■染色・襲(かさね)・縅(おどし)などで、色を次第にぼかしていく
■元氣のある盛んな有様
■香りが漂う
という様々な意味があります。
宣長は、「匂う」の意味を読み手に委ねているのだと思います。
山桜花
「山桜」は野生種の桜のことで、多くの場合、葉と花が同時に展開する(開く)ので、これがソメイヨシノ(花が先に咲いて、あとから緑の葉っぱが出る)と区別する大きな特徴です。
あえて「桜」ではなく「山桜」を使っているのは、人工栽培の植物ではなく、自然に生じた野生のものであり「力強さ」を表しているのかもしれません。そこにはソメイヨシノのような派手さはありません。
また、「山桜」は葉と花が同時に展開するので、「自分の生きざまを後世のものに見せて日本という国を託し、最後に美しく輝いてから潔く散っていくこと」を表しているのではないでしょうか。
まとめ
宣長は、大変桜が好きで「死んだら自分の墓には山桜を植えてくれ」と遺言を残しています。その山桜も一流のやつを植えてくれと言って、遺言状には山桜の絵まで描いています。
日本人が散りゆく桜が美しいと思うのは、わずか四、五日に命をかけて潔く散っていく桜の花に人生を投影し、そこに他の花とは別格の美しさを見出しているのではないでしょうか。
宣長は「源氏物語 玉の小櫛(おぐし)」で、源氏物語の本質は「もののあはれ」であると唱えています。
「もののあはれ」とは「しみじみとした趣。しみじみとした深い感情。」を意味するものです。
桜の散りゆくさまは、「もののあはれ」という日本人の独特の情緒を表し、やがて日本人の心となって、とりわけ高潔さを表現してきました。
気品があること、そしてまた、優雅であることが他のどの花よりも私たち日本人の美的感覚に訴えるのでしょうね。
桜全般の花言葉に「精神の美」があるのもうなずけます。