今更ながら『いつも何度でも』の歌詞の意味を知り、癒される。
木村弓さんの歌う 『いつも何度でも』は、私の大好きな曲の1つです。
『いつも何度でも』歌詞の意味については、いろいろ解釈が異なるようですが、こちらのブログが秀逸でした。
この曲が生まれたプロセスなんかも、素敵ですね。
あのとき、勇気を出したから
木村弓さんは高校時代からアメリカに音楽留学し、ピアノや声楽を学んでいました。
しかし体調不良で歌うことを断念してしまいます。
そんなときに竪琴の一種である「ライアー」に出会い、また歌を始めることにしました。
そして木村さんは「風の谷のナウシカ」を見て、宮崎駿監督に共感を覚えます。
「この人の映画に私の声が合うかもしれない」と直感で思ったそうです。
でも木村さんの体調は不安定な状態でした。結局迷ったまま数年が経ってしまいます。
どこかでいつもジブリ映画を意識していた木村さん。
ある日「もののけ姫」を映画館で観て涙が溢れてしまい、思いを宮崎監督に手紙で伝えました。
そのときにはご自身の歌を吹き込んだCDも同封されたそうです。
CDを聞いた宮崎監督から連絡があり、企画途中の「煙突描きのリン」という作品の話を聞かせてくれました。
イメージが膨らんだ木村さんは、まだ依頼されていないのに曲を作って宮崎監督に送ったそうです。
その曲が「いつも何度でも」です。
結局「煙突描きのリン」は形になりませんでしたが、少し後に木村さんに連絡が来ます。
宮崎監督は「前に聞かせてもらった曲を次の映画のEDしたい」というものだったのです。
「作り手と観客」だった2人が木村さんの勇気で繋がりが生まれ、こんなにもいい楽曲が生まれたんですね。
♪ 呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも心踊る 夢を見たい
かなしみは 数えきれないけれど
その向こうできっと あなたに会える
繰り返すあやまちの そのたび ひとは
ただ青い空の 青さを知る
果てしなく 道は続いて見えるけれど
この両手は 光を抱ける ♪
「いつも心踊る 夢を見たい」
この部分が、木村さんがこの歌で一番伝えたかった部分です。
面白いことなんか何もない毎日。何でこんなに退屈なんだろうと少女は思っています。
身の回りには勝手な大人。上手くいかないことや悲しいことばかり。
だけどいつか自分を変えてくれる「誰か」が現れるんじゃないか……。そんな夢を見ています。
人は間違うことがあります。正しくないと分かっていても、つい弱い自分を許してしまう。
そんなときに空を見上げると、ただどこまでも青くて。
自分がいろいろ難しく考えすぎていたことに気づくのです。
引き返せないところまで来てしまったと思うかもしれませんが、思ったそこからやり直せばいい。
きみの両手は大切なものを掴むためにある。歌がそう励ましてくれています。
♪ さよならのときの 静かな胸
ゼロになるからだが 耳をすませる
生きている不思議 死んでいく不思議
花も風も街も みんなおなじ ♪
最初の部分は「生物の死」を表していますね。
異世界に迷い込んだ少女が初めて身近に体験する「死ぬかもしれない」という感覚。
死んでしまったら心臓が再び動くことはありません。
そのことに呆然とし、空っぽになってしまった少女。そこで初めて気づきます。
ただの風景だった草花も池の魚も、何もかもが「生きて」いるのだと。
自分がここにいるのも生きているから。そしていつかは自分も「ゼロ」になる日が来る……。
それまでに自分が出来ることは何だろう。
少女の目の前が段々クリアになっていく様子が見えますね。
♪ 呼んでいる 胸のどこか奥で
いつも何度でも 夢を描こう
かなしみの数を 言い尽くすより
同じくちびるで そっとうたおう
閉じていく思い出の そのなかにいつも
忘れたくない ささやきを聞く
こなごなに砕かれた 鏡の上にも
新しい景色が 映される ♪
「失敗してもいいよ、何度だってやり直していいんだから。
ちゃんと自分の中に『夢』を持っていることが大切なんだよ。
不安になることだってあるよね。
でも、不満を口にするくらいなら、落ち込んでいる友達のために歌ってあげよう。
きっと友達は喜んで、また一緒に笑えるようになるよ」
自分を呼び覚まそうとするこの声はどこから聞こえてくるんだろうと不思議に思う少女。
異世界のたくさんの人と出会っていくうちに自分の中で眠っていた感情を取り戻していきます。
元の世界に戻るため、少女は両親が待っているトンネルに向かいます。
そのとき「決して振り返ってはいけないよ」と言われました。
少女も何となく感じています。元の世界に戻ったら、異世界のことを忘れてしまうかもしれない。
でも歩きながら、心に刻もうとするのです。
「忘れない。たくさんのこと、出会った人たち、絶対に忘れたりしない」
でもその願いは叶わず、トンネルを抜けた少女の記憶から異世界での出来事は消えてしまいます。
♪ はじまりのあさの 静かな窓
ゼロになるからだ 充たされてゆけ
海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
わたしのなかに 見つけられたから ♪
朝はただの朝じゃない。朝が来るたび、人はリセットされる。
実際に体内時計が狂ってしまった人は朝に日光を浴びるとリセットされると言いますよね。
朝は、ダメかもしれないと思った自分をリセットするチャンスなのです。
一旦「ゼロ」にすれば空いた部分を「新しい何か」で充たすことが出来るようになります。
これまで少女は遠い場所にばかり目を向けていました。場所が変われば新しい自分が始まるんじゃないか……。
自分が上手くいかないのを「環境」によるものと考えていたんですね。
でも少女は感じています。これまでと自分が明らかに違っていることを。
変わった理由を覚えていなくても、自分の心の中に「何らかの芯」が備わったことを。
大切なことを見誤ったり、見ない振りをしてはいけない。でももしも間違ってしまっても、やり直せばいい。
「いつも、何度でも――」
千尋の顔つきが最初と最後で全然違うのもこの映像ならとても分かりやすいです。
全てにおいて受け身で不満気だった千尋の表情がすっかり明るくなっています。
技術として目に光が入れられているのですが、人の目は楽しいことに向かうときは瞳孔が開きます。
だから千尋も、これから出会う新しいことや人に期待でワクワクして目が輝いているのですね。
冒頭のシーンで車の後部座席に背中を預けて仏頂面をしていた少女とはまるで別人です。
「千と千尋の神隠し」は10歳の少女・千尋の冒険の物語です。
でも異世界では何日も経っていたのに、戻ってきたらまだ同じ日だったようです。
引越し途中だった千尋の家族はまた車に乗り込み、新しい土地に車を走らせます。
新しい暮らしに学校、友達……。忙しい千尋はせっかくの経験を忘れてしまうでしょう。
でも大切なのはどれだけ明確に物事を記憶しているかではありません。
その経験から自分の心に根づいたものを見つけられるかどうかではないでしょうか。