『核融合』超伝導トカマク型実験装置の組立完了!【JT-60SA・ITER(イーター)計画・人工太陽・日本原子力研究開発機構】
はじめに
日欧共同で茨城県那珂市において建設を進めてきた核融合超伝導トカマク型実験装置「JT-60SA」の組立が完了したと量子科学技術研究開発機構が4月22日のプレスリリースで発表した。
「JT-60SA」は、2020年秋ごろ初プラズマ着火を含む統合試験運転(コミッショニング)を開始する予定である。
「JT-60SA」は、フランスのサン・ポール・レ・デュランスにて建設が進められている「ITER」が完成するまでは、世界最大の核融合超伝導トカマク装置となる。
JT-60SA計画とは
実施機関名
計画の概要
JT-60SA計画は、核融合エネルギーの早期実現のために、国際熱核融合実験炉(ITER)計画と並行して日本と欧州が共同で実施するプロジェクトであり、日本原子力研究開発機構の臨界プラズマ試験装置「JT-60」の一部施設を再利用して、先進超伝導トカマク装置「JT-60SA」へと改修した設備で実施される。
正確に言うと
原子力委員会の定めた「第三段階核融合研究開発基本計画」の中核であるITER計画の幅広いアプローチ活動として文部科学省ITER計画推進検討会が日欧共同で実施すべき事業と選定した「サテライト・トカマク計画」
と、
科学技術・学術審議会 学術分科会 基本問題特別委員会 核融合研究ワーキンググループ報告書「今後の我が国の核融合研究の在り方について」に定義された「トカマク国内重点化装置計画」
の合同計画である。
目的
■ ITERの技術目標達成のための支援研究
ITERと同じ形で高い性能を持つプラズマ運転を行い、その成果をITERへ反映させる。
■ 原型炉に向けたITERの補完研究
高出力の核融合炉を実現するため、高い圧力のプラズマを長時間(100秒程度)維持する運転方法の確立を目指す。
■ 人材育成
ITER計画をはじめとする核融合研究開発を主導できる研究者・技術者の育成を行う。
ITER運転シナリオの最適化などのITERの支援研究、及び高圧力定常プラズマの運転・制御手法の開発などITERで行うことの困難な研究を実施して原型炉の設計を主導し、核融合エネルギーの早期実現を図ることである。
本計画により、ITER・原型炉開発を主導する人材を育成する。我が国唯一の大型トカマク装置であり、世界の核融合実験装置の中で、ITERに対して最も大きな支援を行う能力を有するとともに、ITERでは実施が難しい高圧力プラズマ定常化研究開発を実現できる世界で唯一の装置である。
幅広いアプローチ計画としての予算規模は日欧折半、全体で435億円であり、外国が200億円を越える大型の資金をわが国設置の研究開発装置に投資する初の事例である。
主な研究計画及び達成目標
【達成目標】
臨界条件クラスの高性能プラズマを長時間(100秒程度)維持する実験をITERに先行あるいは並行して実施し、その成果によってITER計画を効率的に進める。
また、原型炉において実用化に繋がる一定の経済性についての見通しを得るために、ITERでは行うことの難しい「原型炉で必要となる高出力密度を可能とする高圧力プラズマの長時間(100秒程度)維持」を実現し、原型炉の運転手法を確立する。
【研究計画】
日欧で合意された実施計画では、JT-60SAの運転は、
■初期研究期
軽水素プラズマを用いた総合機能試験と重水素プラズマを用いた実験研究:4-5年間
■統合研究期
主要達成目標(臨界条件クラスおよび高圧力プラズマの長時間維持)を達成し、自律性の高い高圧力プラズマの定常維持に必要な加熱・計測・電流駆動方法と制御機器構成を決定:4-6 年間
■拡張研究期
高圧力かつ放射損失割合の高いプラズマの運転限界を明らかにするとともに原型炉の標準運転シナリオ・制御手法を確立
と予定されている。
期待される成果
ITER及び原型炉を直接見通すあるいは飛躍無く予測できるプラズマ領域で研究開発を進め、得られた高性能プラズマ実験の成果をITERに反映させるとともに、高圧力プラズマの定常化研究によって原型炉に必要な「総合性能」を実証しその運転手法を確立する。
「初期研究期」では、ITERの建設・運転に対して貢献可能な実験項目を優先的に実施し、ITERの加熱運転開始以前にこれを完了することで、ITERのコミッショニングシナリオや運転シナリオ確立へ貢献する。
「統合研究期」では、高圧力プラズマの定常化研究の成果により、原型炉の基本設計を確定する。また、高性能プラズマ実験により、ITERのDT運転の効率的実施に貢献する。
「拡張研究期」では、原型炉の運転・制御手法の詳細を決定するものであるため、原型炉の詳細設計・建設と平行しつつこれを進め、原型炉の運転に繋げる。
本計画は、国際計画であると同時に原型炉に向けた国内トカマク研究計画の中核としての役割を担うものであり、国内研究者200-300名及び欧州を中心とする外国研究者200-250名の参加が想定される。これにより、ITER・原型炉開発を主導する人材を育成する。
核融合エネルギー
核融合は太陽が輝き続けられるエネルギー源であり、地上での核融合の実現を目指して、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどより重い原子核になる核融合反応を利用する。
燃料である重水素、三重水素の原料となるリチウム資源は海水中にほぼ無尽蔵にあり、核融合エネルギーはCO2を発生しない。そのため、エネルギー及び環境問題を根本的に解決すると期待されている。
ITER (核融合実験炉:イーター)
制御された核融合プラズマの維持と長時間燃焼によって核融合の科学的及び技術的実現性の確立を目指すトカマク型(超高温プラズマの磁場閉じ込め方式の一つ)の核融合実験炉。
1988年に日本・欧州・米国・ロシアが共同設計を開始し、2007年には日本、欧州、米国、ロシア、中国、韓国、インドが「イーター協定」を締結して、国際機関「イーター国際核融合エネルギー機構(イーター機構)」が発足した。
現在、サイトがあるフランスのサン・ポール・レ・デュランスにおいて、イーターが格納される建屋の建設が進められているとともに、各極において、それぞれが調達を担当する様々なイーター構成機器の製作が進められており、2025年頃からのプラズマ実験の開始を目指している。
イーターでは、重水素と三重水素を燃料とする本格的な核融合による燃焼が行われ、核融合出力500MW、エネルギー増倍率10を目標としている。
参考資料
遂に組立完了 世界最大の核融合超伝導トカマク型実験装置JT-60SA~ 今後、初プラズマ着火に向けて始動 ~ - 量子科学技術研究開発機構
資料1-1 進捗状況について-JT-60SA計画(日本原子力研究開発機構):文部科学省
関連動画
大型プラズマ実験装置『JT-60SA』見学ツアー(15:43)
おまけ(中国の人工太陽)
「希望の星」となるのか、はたまた「パンドラの箱」となってしまうのか神のみぞ知る。
半島の白頭山も1000年に一度の大噴火が囁かれているようだが。